こちらの記事ではFX初心者のテクニカル分析実践編(全9回)のうち、第8回FX初心者がテクニカル分析で知っておきたい「行動経済学」と「プロスペクト理論」について解説していきます。
講座①~⑨までご覧いただくとFXのテクニカル分析の基礎が身につくようになっています。それでは本題に入っていきます。
目次
FXのトレーダーが知るべき行動経済学とは?
この記事のテーマである行動経済学とは、心理学と経済学が融合した学問のジャンルです。
「人は常に合理的な行動をするもの」という前提の経済学だけでなく、「人は感情に任せて非合理的な行動をしてしまうこともある」という心理学の考え方も含まれます。
経済学に人間味を掛け合わせたようなイメージとなっており、従来の経済学では分析できなかったリアルな行動が論理的に解説されているのが特徴です。
投資やマーケティングの分野とは特に親和性が高く、大変注目されている学問となっています。
行動経済学がFXで活きるのはメンタル管理
行動経済学の知識がFXで活きるのは、トレード中のメンタル管理です。
FXで利益を上げるためには合理的なトレードルールが必要となります。
しかし、実際に自分のお金をリスクに晒してトレードしていると、感情の邪魔が入って非合理な行動が増えていくのです。
優れたトレードルールを作ったとしても、感情が介入してそのルールを守れないなら何の意味もありません。
行動経済学を駆使した理論武装は、合理的なトレードを邪魔する感情への対処に持ってこいなのです。
FXで最も重要となるプロスペクト理論
行動経済学には多くの理論や学説がありますが、FXのトレーダーがまず知るべきなのは「プロスペクト理論」です。
プロスペクト理論では、人は利益よりも損失に対しての方が敏感であると述べられています。
人は利益が出ている状態ではリスクを回避する行動を取りやすく、逆に損失を抱えているときには取り戻そうとして大きなリスクを取りやすくなります。
プロスペクト理論の具体例
具体例を出していきます。
- Aは無条件で50万円をもらえる
- Bはコイン投げをして表が出たら100万円がもらえる
という2つの選択肢があったとしましょう。
2つの選択肢の期待値は同じですが、ほとんどの人がAを選択します。
リスクを取らずに確実に50万円を手にする方が安心できますもんね。
一方で、借金を100万円抱えている状態で、
- A:100万円の借金が無条件で50万円に減額される
- B:コインを投げて表が出れば100万円の借金がチャラになる
という選択肢であれば、Bを選ぶ人の方が多くなります。
「期待値が50万円である」と言うことに関しては、ひとつ前のスライドの質問と意味は同じですが、回答の偏りは真逆になるのです。
こんな結果になる理由は、もともとあった損失を解消するために、より大きなリスクを取ろうという心理が働くからといえます。
FXのトレードでプロスペクト理論がはたらくと、含み益があるときは早く利益を確定したい、含み損があるときは損失が無くなるまで粘りたい、という感情が強くなります。
その結果、利食いは浅くなり、損切は深くなりますので、コツコツ小さな利益を積み重ねても1回の損失で大きな痛手を負うというパターンに陥ってしまうのです。
プロスペクト理論を克服する2つの方法
では、このプロスペクト理論の罠にハマらないようにするには、どうしたらいいのでしょうか?
おすすめの克服法が2つありますので、ご紹介しておきます。
①エントリー時に出口を決めておく
1つ目は、エントリーの時に出口(つまり、利食いと損切りポイント)を決めておくことです。
エントリーした時に、ここまで行ったら利食い、逆にここまで逆行したら損切りという価格を決めて注文を入れておきましょう。
そして、どちらかに到達するまでは決済しないというルールを決めて厳守すれば、基本的にプロスペクト理論が入る余地はなくなります。
とはいえ、ルールを守ると誓っても邪魔をしてくるのが感情です。
早めに利確することもあるでしょうし、損切り価格を引き下げて粘ることもあるでしょう。
②トレードの記録と検証
そこで、2つ目の克服法はトレードの記録と検証です。
自分が行ったトレードを記録して、ポジションを決済した後のニュートラルな状態でそのトレードを振り返ってみましょう。
トレード後の冷静な状態で、「プロスペクト理論にやられていないだろうか?」、「感情的にトレードをしていないだろうか?」と検証する習慣を作ることで、感情に左右されないメンタルが磨かれていくのです。
行動経済学のプロスペクト理論を理解してFXのメンタル管理に役立てよう
ということで、行動経済学とプロスペクト理論に関する解説は以上となります。
トレードの邪魔をする感情に対しては、論理で対抗するのが一番です。
プロスペクト理論を意識しながら、トレードの合理性を追求していきましょう。
コメントを残す